核兵器をめぐる国際社会の分断は、今後一層深まっていく(広島市の平和記念公園を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花するエマニュエル駐日米大使[左]。右は岸田文雄首相=3月26日)  (C)時事

 ロシアによるウクライナ侵略(ロシア・ウクライナ戦争)は、核大国であるロシアが、かつて世界第3位の核兵器配備国(保有国ではない)であったウクライナに対し、核兵器の使用をちらつかせつつ国際法上正当な理由がないまま攻撃を行ったということで、軍事戦略上の核兵器の役割や国際政治における核兵器の意義にも注目が集まることになった。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は本当に核を使うのか、使うとしたらどのような状況において使われるのかという問いは、この戦争の帰趨を論じるうえで重大な意味を持つ。あるいは、核兵器の使用に至らずとも、ロシアによる信憑性を伴った核の恫喝は、核を持たず、核大国による脅威に悩む国々に対して、改めて米国から提供される、拡大核抑止を含む同盟国防衛のコミットメントの重要性を印象付けた。日本ではにわかに核共有に対する関心が高まり、安倍晋三元総理をはじめとする政治家がその可能性に言及し、ある世論調査では国民の8割が核共有について議論すべきと考えているとの結果も出た。また、従来非常に注意深くロシアとの間合いを測りながら安全保障を追求してきたフィンランドとスウェーデンが、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を申請し、同盟の「核の傘」の下に入ることを決断した。核兵器の存在が改めて見直されることになったのである。

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