東アジアの防衛支出における中国のシェアは過去20年間で45%から65%に上昇。一方、日本は36%から15%に低下している[北京の天安門広場で行われた中国建国70周年の軍事パレード=2019年10月1日](C)AFP=時事

 

はじめに

 長い間、日本の防衛費はGDP(国内総生産)の1%をやや下回る程度、実額で5兆円程度だった。これは遡れば、1976年に三木内閣の閣議決定で「GNP1%枠」(これは「GNP」の1%であって「GDP」の1%ではない)を定めたことによるものだが、実際には「GNP1%枠」は1986年の中曽根内閣の閣議決定で撤廃されており、制度としては既に存在していない。

   ただ同時に、防衛費は現実にはGDPの1%を超えたことはほとんどない。それは制度的な上限によるものではなく、厳しい財政環境下で予算にシーリングが課せられ、増額が抑えられていたこと、また、1980年代末に冷戦が終結してしばらくの間は、安全保障環境が安定していて、そもそも防衛費を大きく増額する必要がなかったことによる。

 しかし、北朝鮮の核・ミサイル開発中国の急激な軍事力の近代化、さらにロシア・ウクライナ戦争に伴う国際安全保障環境の悪化を踏まえ、防衛費をGDPの2%、つまり10兆円のレベルに増額させることが議論されている。本稿ではこの点について論点を整理する[1]。なお、本稿で示す議論は、すべて筆者個人のものであり、防衛省並びに防衛研究所の見解ではない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。