日本の防衛費:ハウ・マッチ・イズ・イナフ?(上)――「GDP2%」をファクトと合理性で検証する

執筆者:高橋杉雄 2022年7月18日
エリア: アジア
東アジアの防衛支出における中国のシェアは過去20年間で45%から65%に上昇。一方、日本は36%から15%に低下している[北京の天安門広場で行われた中国建国70周年の軍事パレード=2019年10月1日](C)AFP=時事
防衛費をGDPの2%=約10兆円に増額する政策課題は、どのような論点に基づき進められるべきなのか。適正レベルを定めるために必要な異なる2つのアプローチ、日本周辺諸国との比較、防衛費の国家財政における負担の考量を、まずは踏まえる必要がある。(こちらの後編へ続きます)

 

はじめに

 長い間、日本の防衛費はGDP(国内総生産)の1%をやや下回る程度、実額で5兆円程度だった。これは遡れば、1976年に三木内閣の閣議決定で「GNP1%枠」(これは「GNP」の1%であって「GDP」の1%ではない)を定めたことによるものだが、実際には「GNP1%枠」は1986年の中曽根内閣の閣議決定で撤廃されており、制度としては既に存在していない。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
高橋杉雄(たかはしすぎお) 1972年生まれ。防衛省防衛研究所防衛政策研究室長。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、ジョージワシントン大学コロンビアンスクール修士課程修了。専門は現代軍事戦略論、日米関係。著書に『現代戦略論―大国間競争時代の安全保障』(並木書房)、『日本人が知っておくべき 自衛隊と国防のこと』(辰巳出版)、『日本で軍事を語るということ 軍事分析入門』(中央公論新社)、共著に『「核の忘却」の終わり: 核兵器復権の時代』(勁草書房)、『新たなミサイル軍拡競争と日本の防衛』(並木書房)、『ウクライナ戦争と激変する国際秩序』(並木書房)、『ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか デジタル時代の総力戦』(文春新書)など。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top