トリニダード・トバゴのパサード=ビセッサー首相(当時)との夕食会に臨んだ安倍夫妻(C)EPA=時事
 

 安倍晋三元首相の銃撃事件に関するニュースは、日本から遠く離れたカリブ地域にも伝わっており、大きな衝撃が広がっている。

 安倍元首相は、カリブ地域の小島嶼国・低海抜国が集まる地域機構カリブ共同体(カリコム)の独立14カ国のうち、トリニダード・トバゴ(以下、TT)とジャマイカを日本の首相として初めて訪問し、カリコムの政界・有識者の間では日・カリコム関係の発展に貢献したと高く評価されている。

 筆者は在TT日本大使館にカリコム10カ国の政治・外交・社会担当の専門調査員として勤務していたとき、安倍氏のTT訪問(2014年7月)とジャマイカ訪問(2015年9月)に裏方として関わった。どちらも準備期間中は大忙しではあったが、多くの関係者と協力しながら日・カリコム関係にとって画期的且つ歴史的な出来事に関与できたことは自分の職業人生にとって忘れ難いものとなった。

サプライズ訪問の狙い

 中南米でも、ミニ国家の集まりで資源に乏しいカリコム地域は、レゲエや陸上、コーヒーで有名なジャマイカを除くと、日本人にとって馴染みが薄い地域である。市場規模が小さく観光資源も少ないため、日本企業の数も日本人観光客の数もわずかだ。現地の人々にとって日本といえば自動車(元英領の国が多いため日本の中古車が人気である)やアニメの国で、なかには中国や韓国と混同している人々もいる。

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