“ゴーン・ショック”に揺れた日産自動車の経営立て直しは社外取締役が主導して進んだ[日産自動車の木村康取締役会議長(左)と豊田正和指名委員長=2019年10月8日](C)時事

 社外取締役がメディアに取り上げられる頻度がこの2~3年、急激に高まっている。2021年3月から上場企業に社外取締役の設置が義務づけられたこともあるが、日産自動車東芝など社外取締役が経営体制の刷新で前面に立つケースが話題になったことが大きい。

   ただ、社外取締役が平時において経営にどのような役割を果たしているのかは株主、取引先、消費者にとってはみえにくい。執行側に対する監視、経営者の評価、解任・選任などは当然として、それ以上に果たすべき役割が広がっている。社内経営陣にはない視点と助言であり、時に外部人脈を使った支援である。新たな成長に向け、経営の隘路を突破させるのも社外取締役の仕事になりつつある。 

 社外取締役を「上級国民」と指摘する経済誌の記事が話題となった。社外取締役の報酬を有価証券報告書など開示情報を用いて推定し、ランキング化したり、複数社の兼任状況、取締役会への出席状況などを示したりしたものだ。これまで体系的には分析されなかった社外取締役の実態を広く示す意味はあったが、社外取締役が実際に果たしている役割や活動についての掘り下げはなく、「わずかな時間を割くだけで、一般のサラリーマンがうらやむ高収入を得ている」と揶揄するタッチだったのは残念だ。今、必要なのは社外取締役を停滞する日本企業を内側から変革する力として活用する視点だからだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。