新安保3文書が示す「積極的平和主義」具体化へのキーポイント
2022年12月22日

戦略とは日本の意志を明確にする強いメッセージでもある[安保3文書を決定し会見する岸田文雄首相=2022年12月16日](C)時事
「希望の世界か、困難と不信の世界かの分岐点」と、新たな「国家安全保障戦略」の結語は記している。2022年12月16日に改定された国家安全保障戦略以下の安保3文書は、反撃能力の保有や、防衛予算対GDP(国内総生産)比2%を掲げるなど、戦後の安全保障政策を転換させるものとして注目された。そのような転換の背景には、同戦略自身が述べる厳しい現状認識がある。
筆者は本年8月に本誌に『「安保3文書改定」で踏まえておくべき「成り立ちの歴史の舞台裏」』と題した小論を寄稿した。本稿では、実際の3文書(これまでの「防衛計画の大綱」は「国家防衛戦略」に、また「中期防衛力整備計画」は「防衛力整備計画」に置き換わった)の中身を踏まえ、ポイントと見る点について歴史を俯瞰しつつ論じていく。
ポイント1:「脅威対抗・運用重視」への転換
第一に、「脅威対抗・運用重視」路線の明確化と実効化だ。
旧防衛大綱は長らく、「基盤的防衛力構想」の下、防衛力整備のために具体的な脅威を想定しない「脱脅威」という考えを掲げていた。初めて防衛大綱を策定した1970年代は、東西冷戦下であってもデタント(緊張緩和)の時代であり、そうした時代背景のなかで「防衛政策に関する国民のコンセンサスづくり」が重視されたためであった。それだけでなく、防衛力を脅威とひもづけないことで、デタントやあるいはその後のポスト冷戦期における防衛力への下方修正圧力をかわすというねらいもあった。
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