習近平・中国国家主席(中央右)は、まだ立候補もしていないプーチン氏(同左)の大統領再選を支持して見せた[2023年3月21日、モスクワのクレムリンで開催されたレセプションを終えた両首脳](C)EPA=時事

 昨年秋の第20回党大会を経て、中国の対外姿勢に一定の調整がなされたように見受けられた(昨年12月の拙稿参照)。この調整は現在、中国がかかえる喫緊の課題が経済の立て直しにあることから来る。中国経済は二重苦、三重苦の中にある。経済が上手くいかなければ共産党の統治はすぐに動揺する。対米関係の悪化は、台湾問題を通じて中国の安全に直接の脅威を与えるのみならず、グローバル経済の分断をもたらし、中国経済にとって大きな不安定要因となりかねない。バイデン政権となり、中国は米国の全面的な中国押さえ込みが長期間続くと最終的に判断した。米国との「持久戦」を覚悟したのだ。

 1938年に毛沢東は『持久戦を論ず』を書き、日本との長期戦に備えた。久方ぶりにこの一文を読み直して、毛沢東の戦略が現在の中国指導部の思考に大きな影響を与えていることが理解できた。毛沢東は、日中の持久戦は3つの段階を経ると予測した。第1段階は日本の戦略的侵攻、中国の戦略的防御、第2段階は日本の戦略的守り(保守)、中国の反攻準備、第3段階は中国の戦略的反攻、日本の戦略的退却の時期となる。

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