クリステション首相は7月のNATO首脳会合までにトルコを軟化させられるか(C)EPA=時事


 トルコでの大統領選はレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の勝利に終わった。この選挙を自国の安全保障と結び付けて眺めていたのがスウェーデンだ。

 2022年5月18日、スウェーデンはフィンランドと共にNATO(北大西洋条約機構)への加盟申請を行った。それまでスウェーデンの外交・安全保障政策の柱は約200年にわたり軍事非同盟だった。冷戦期には軍事非同盟の立場を活かし、大国政治を批判しながら積極的な平和外交を推進したことで国際政治上の独自の地位を得たため、軍事非同盟はスウェーデン国民のアイデンティティとも言えるものだった。そのため、NATO加盟の決断はスウェーデン外交の大転換だった。

 その大きな決断から一年が経過した。スウェーデンはいまだにNATOの正式な加盟国ではない。その理由はトルコとハンガリーがスウェーデンのNATO加盟議定書を批准していないためだ。

 トルコでの選挙の結果、クルド人のテロリストを匿っているとしてこれまでスウェーデンのNATO加盟に反対してきたエルドアン氏が大統領として再選された。また、加盟議定書を批准する議会も、エルドアン氏の影響が及ぶ与党連合が過半数を握った。

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