
5月14日の大統領選挙の結果
現職のレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が再選し、これまでの政策が継続するのか、それとも最大野党共和人民党の大統領候補のケマル・クルチダールオール氏が勝利し、エルドアン政権が終焉するのか――。国内外から高い注目を集めたトルコの2023年5月14日の大統領選は、エルドアン氏が得票率49.52%、クルチダールオール氏が得票率44.88%、右派の独立系候補シナン・オアン氏が得票率5.17%、前回の2018年大統領選挙で大統領候補として善戦した故郷党(Memleket Partisi)のムアレム・インジェ氏が得票率0.43%という結果に終わった。どの候補も過半数に届かなかったため、上位2名、つまりエルドアン氏とクルチダールオール氏の間で2週間後の5月28日に決選投票が行われることになった¹。
また、同時に行われた議会選挙では、エルドアン氏率いる公正発展党が35.58%と最も多くの得票率を得た。次いで共和人民党が25.33%、公正発展党とともに与党連合・人民同盟を組む民族主義者行動党が10.08%、共和人民党と野党連合・国民同盟を組む善良党が9.69%、国民同盟と選挙協力を行った労働と自由同盟の主要政党である親クルド政党の緑の左派党が8.82%という結果となった。同盟別に見ると、人民同盟が49.47%、国民同盟が35.08%、労働と自由同盟が10.55%であり、公正発展党が主導する人民同盟が過半数近くを獲得し、強さを示した。
2015年の議会選挙までは10%未満の得票率しか得られない政党は議席を獲得できなかったが、2018年の議会選挙から政党間の同盟で10%以上獲得すれば議席を確保できるようになり、さらに今回の選挙直前の4月に政党間の同盟で7%以上獲得すれば議席が確保できるようになったため、人民同盟、国民同盟、労働と自由同盟に参加した各政党は議席を獲得することとなった² 。
エルドアンの5つの戦略
それではエルドアン陣営とクルチダールオール陣営の大統領選の戦略はどのようなものだったのだろうか。
エルドアン陣営は「継続」をキーワードに、エルドアン政権のこれまでの実績および「強い大統領制」での5年間の実績を強調した。そのうえで選挙戦では①強いリーダーシップを前面に押し出す、②我々と敵を区別し、敵(野党連合)を徹底的に批判する、③与党としての強みを最大限活用する、④欧米を牽制する、⑤シリア難民の帰還を視野に入れる、⑥外交での功績を強調する、という戦略を採った。トルコ国民はムスタファ・ケマル・アタテュルクに代表されるように強いリーダーを……

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