イスラエル=ハマス紛争は、すでに緊張と対立があふれる世界秩序をさらに流動化させる要因に[2023年10月13日、パレスチナ自治区ガザ](C)AFP=時事

 10月7日、パレスチナのイスラム組織ハマスが、ロケット弾などを用いてイスラエルへの大規模な攻撃を開始した。これを受けて、イスラエルもまた報復に踏み切った。また、前月の9月19日には、アゼルバイジャンが隣国アルメニアとの間の係争地となっていたナゴルノ・カラバフに対して、「対テロ作戦」を開始して、翌日にアゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領が同地での主権を回復したことを宣言した。

 中東とコーカサスという、それまで長年対立が見られ紛争が膠着状態にあった二つの地域で、多くの死者を伴う軍事衝突が勃発した。そしてそのことが、すでに緊張と対立があふれる世界秩序において、さらなる不安をもたらしている。

大国の影響力の後退

 これらは、2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻と、はたしてどのような連関があるのだろうか。それを理解する背景として、いくつかのことを考慮に入れる必要があるだろう。第一に、ロシアの力の後退である。ウクライナで大規模な軍事行動を開始したロシアは、当初は数日でその「特別軍事作戦」を終わらせるという楽観的な見通しを立てていた。ところが、1年半を経過しても戦闘の終結に目途が立たず、膨大な国費を軍事費に費やすとともに、国際社会からの経済制裁によって半導体などの先端技術を用いた部品や製品の輸入が困難となっている。ロシアが、国力をウクライナで大きく浪費するなかで、その周辺に位置するアゼルバイジャンやアルメニアでの影響力が大幅に後退している。さらには、中央アジアでもロシアの影響力の後退によって、中国がそこでの力を拡大する。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。