薔薇色の街、エレバンの共和国広場(筆者撮影、以下すべて)

 

 アルメニアの首都エレバンは「薔薇色の街」である。街の中心「共和国広場」を取り囲む政府系庁舎やホテルから、郊外の集合住宅まで、この地方に多い濃淡様々なピンクの凝灰岩が石材として使われているからである。コンクリート造りの無機質な風景が多い旧ソ連の大都市としては、異例の温かみが漂う。

 エレバンには、アルメニア総人口の3分の1以上にあたる100万人あまりが暮らす。その中心部にいる限り、人々は自由と繁栄を十分謳歌しているように見える。緑豊かな街路には、パリやミラノに負けない小洒落たブティックやレストランが軒を並べる。先端のファッションに身を包んだ若者たちが闊歩する。ただ、一皮めくるとアルメニアは敗戦国であり、人口減にも苦しむ小国である。当企画のこれまで2回で見てきたように、トルコ、イラン、ロシアといった地域大国に囲まれ、欧米やインド、中国も関与し、その影響力や思惑に左右もされる。

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