日本はヨーロッパのなかで有志連合を課題ごとに組み替える柔軟性が必要になる[協力文書に署名したマクロン大統領(左)と高市早苗首相(右)=2026年4月1日、東京・赤坂迎賓館](C)EPA=時事

 

マクロン演説の抑止観――認識すべきは従来戦略との連続性

 実は欧州連邦論者の間では、フランスの核の「欧州化」のアイデアは決して新しくない。ドイツのヨシュカ・フィッシャー元外相は、以前から欧州安保の自律の必要性を説いており、ロシアによるウクライナ侵攻後には、ヨーロッパとしての核抑止力を持つ必要性を訴えるようになっていた。そのような流れの中で、今回のマクロン演説は、もっとヨーロッパの独立性、フランスの自律を高らか謳うのかと思っていたが、実際には内容は全く違っていた。

 まず、マクロン大統領は前回2020年の演説ですでに、ヨーロッパのためにフランスの抑止力を役立てる可能性に言及していたことを押さえておかねばならない。当時すでにマクロンは、仏の抑止力が「ヨーロッパ的次元」(European dimension)を持っていると言い、準備のできたヨーロッパのパートナーに「戦略的対話」と、仏抑止力部隊の演習に関係を持つことを提案していた。今回の特徴は、それが「前方抑止(forward deterrence)」という具体的な形で提示されたことである。仏核演習への通常戦力やシグナリングによる参加にとどまらず、仏戦略空軍が同盟国に展開する可能性をも示唆した。これは陸上での抑止力の運用地域をフランス本土の内側から欧州へと広げるものではあるが、フランスが独自に核兵器を使用する権限を手放すものではない。フランスの核抑止力が「我々の行動の自由と独立の究極の保証」であり、その使用の決断はフランス大統領一人が下すものであることは変わりない。また、領域的にどこが「レッドライン」であるかが曖昧であることには変わりない。

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