チュニジア新体制の結集軸「市民国家」概念とは

執筆者:池内恵 2011年10月29日
タグ: イラン

 チュニジアで10月23日に行われた憲法制定会議選挙の結果がほぼ判明し、中道イスラーム主義政党ナフダ(al-Nahda; Ennahda 復興)党が得票率約41.5%で、全217議席のうち90議席を獲得して第一党となった。ナフダ党は首相候補に幹事長のハマーディー・ジバーリー(Hamadi al-Jibali)を提示し、連立協議を進めている。党首で理念的指導者のラーシド・ガンヌーシー(Rashid al-Ghannushi)は今次選挙に出馬しておらず、役職につかない旨を宣言している。

 アラブ諸国で自由な選挙が行われた場合、少なくとも最初の数回の選挙では、イスラーム主義政党が躍進する可能性が高い。イスラーム教の理念が全てを解決するという信念は多くの国民に共有されていることと、これまで弾圧されながら活動していたことから、前政権に対する唯一のオルターナティブとして、変化を期待する票を多く集めるだろう。首相候補のジバーリーにしても、ブルギバ政権からベン・アリー政権にかけての16年間(2006年まで)投獄された経験を持つ(恩赦で出獄)。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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