大統領選後のアメリカ外交の隠れた焦点~西アフリカへの軍事的関与

白戸圭一
執筆者:白戸圭一 2012年10月30日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 北米 アフリカ

 反米の国際テロ組織アルカイダに誕生のきっかけを提供したのは、極めて皮肉なことに米国自身である。米ソ代理戦争の様相を帯びていた1980年代のアフガニスタン内戦で、米国はアフガン国内の反ソ勢力にカネと武器を供与し続けた。共産主義ソ連に抵抗するアフガンの人々を助けようと世界のイスラム諸国から集まった義勇兵の中に、サウジアラビア出身のウサマ・ビンラディンやエジプト出身のアイマン・ザワヒリがいた。米国のカネと武器で第一級の戦闘員に変身した彼らは、やがて反米・反西欧文明を掲げるテロ集団と化し、9・11を引き起こした。「共産主義の膨張」という当面の課題に対処するための軍事支援が、巡り巡って米国本土へのテロ攻撃につながってしまった構図である。

 安直な軍事的介入が事態を複雑化させた失敗の典型は、ブッシュ前政権のイラク攻撃だろう。フセイン独裁体制による人権抑圧は許容できないとしても、フセイン体制を取り除いたイラクを待っていたのはテロの嵐であった。現在の米世論の多くは、イラク戦争が米国の国力衰退の引き金を引いたと考えている。今日の米国で、ブッシュ前大統領ほど人気のない大統領経験者はいない。

 軍事介入・支援を巡る一連の失敗体験は、米国のトラウマになっている。少なくともオバマ政権は紛争への軍事介入及び紛争地の特定勢力への軍事支援に極めて慎重である。それは単に米財政事情が悪化しているからではないし、ましてやオバマ大統領が「平和志向の人」だからでもない。それは、大統領選の共和党候補ロムニー氏が、オバマ政権のシリアへの不介入方針に賛同していることを見ても分かる。今の米国は党派を問わず軍事介入・支援に極めて慎重であり、介入時、不介入時それぞれの損得について精緻な検討を重ねた上で、結論が下される傾向が従来にも増して強まっている。

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執筆者プロフィール
白戸圭一
白戸圭一 三井物産戦略研究所国際情報部 中東・アフリカ室主席研究員。京都大学大学院客員准教授。1970年埼玉県生れ。95年立命館大学大学院国際関係研究科修士課程修了。同年毎日新聞社入社。鹿児島支局、福岡総局、外信部を経て、2004年から08年までヨハネスブルク特派員。ワシントン特派員を最後に2014年3月末で退社。著書に『ルポ 資源大陸アフリカ』(東洋経済新報社、日本ジャーナリスト会議賞)、共著に『新生南アフリカと日本』『南アフリカと民主化』(ともに勁草書房)など。
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