大統領選後のアメリカ外交の隠れた焦点~西アフリカへの軍事的関与

 反米の国際テロ組織アルカイダに誕生のきっかけを提供したのは、極めて皮肉なことに米国自身である。米ソ代理戦争の様相を帯びていた1980年代のアフガニスタン内戦で、米国はアフガン国内の反ソ勢力にカネと武器を供与し続けた。共産主義ソ連に抵抗するアフガンの人々を助けようと世界のイスラム諸国から集まった義勇兵の中に、サウジアラビア出身のウサマ・ビンラディンやエジプト出身のアイマン・ザワヒリがいた。米国のカネと武器で第一級の戦闘員に変身した彼らは、やがて反米・反西欧文明を掲げるテロ集団と化し、9・11を引き起こした。「共産主義の膨張」という当面の課題に対処するための軍事支援が、巡り巡って米国本土へのテロ攻撃につながってしまった構図である。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
白戸圭一(しらとけいいち) 立命館大学国際関係学部教授。1970年生れ。立命館大学大学院国際関係研究科修士課程修了。毎日新聞社の外信部、政治部、ヨハネスブルク支局、北米総局(ワシントン)などで勤務した後、三井物産戦略研究所を経て2018年4月より現職。著書に『ルポ 資源大陸アフリカ』(東洋経済新報社、日本ジャーナリスト会議賞受賞)、『日本人のためのアフリカ入門』(ちくま新書)、『ボコ・ハラム イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織』(新潮社)など。京都大学アフリカ地域研究資料センター特任教授、三井物産戦略研究所客員研究員を兼任。
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