【台湾】「外交・戦略」とは別次元の「国家目標」

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2012年12月5日
カテゴリ: 国際
エリア: 中国・台湾

 中国を旅行していると、ついつい「中国台湾」という記述に目が行く。日本では基本的にまず見かけない表記だ。
 国際的に台湾を言い表すときは「Taiwan(台湾)」が圧倒的に多い。スポーツなどの場では「Chinese Taipei(中華台北)」もある。台湾に手紙を送るときは「R.O.C(中華民国)」と書く人もいる。台湾人に対し、「あなたは中国台湾の出身だね」と言えば、ほぼ確実に嫌われるだろう。

「核心的利益」という位置づけ

 しかし、中国からすれば「中国台湾」はごくごく自然な表記だ。最近、中国での新しい旅券の地図に南シナ海や台湾の観光地が含まれていて話題になった。台湾は抗議したが、中国で普通に売られている地図では常に台湾は中国の領土として描かれている。
 中国において、領土が絡んで「核心的利益」と位置づけられる問題は、チベットと、ウイグルと、台湾の3つである。1949年の中華人民共和国の成立後まもなくチベット、ウイグルは支配下に置かれたが、台湾に対しては米国の介入もあって、蔣介石率いる国民党の台湾防衛を崩せなかった。
 中国は国家の成り立ちにおいて、根底に「領土の回復」を全面的に正当化する論理を内在させている。中国の近代があまりに悲惨であり、欧米列強や日本に領土を蹂躙され、奪われた屈辱を晴らすために、中国は近代化に成功し強国とならねばならない、との決意があるからだ。
 それは、孫文に端を発し、蔣介石や毛沢東など主義主張を超えて近代中国で活躍した人物に貫かれた思想であり、その思想ゆえに、領土問題での妥協は国家への裏切りというバックファイヤーを生むため、中国の指導者は領土問題で強硬に出ない方が難しい。
 その意味で、台湾は日清戦争によって日本に割譲された象徴的な土地であり、台湾の統一は最後の「失われた領土」の回復として崇高な使命なのである。中国憲法でも台湾は「中華人民共和国の神聖な領土」と書かれている。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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