「炎上」が続く南方週末の記事差し替え事件

執筆者:野嶋剛 2013年1月7日
エリア: アジア

 中国でリベラルな報道姿勢で知られ、知識人の間で非常に大きな影響力を持つ「南方週末」が新年の論説で民主政治の重要性を訴えようとしたところ、広東省の党委員会宣伝部に記事を差し替えられた。2013年の中国の言論・メディア界における最初の「炎上」事件だ。7日現在、事件は広東省・広州で街頭の抗議運動が行われ、香港や台湾のメディア関係者からも相次いで批判の声が上がるなど燃え広がる様相を見せており、今後の展開は習近平体制の報道統制の方針を占う意味でも注視される。

 この問題の経緯は以下の通りだ。

 1月3日の紙面で南方週末は「新年献詞」という2000文字からなる記事で、「中国の夢、憲政の夢」と題した文章を掲載しようとしたが、宣伝部の審査部門は不満を示し、文章の半分を書き換え、タイトルも「我々はいかなる時よりも夢に近づいている」と変更されたとされる。

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執筆者プロフィール
野嶋剛(のじまつよし) 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『香港とは何か』(ちくま新書)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com
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