残高減少でも「借金1000兆円突破」と叫び続ける財務省

執筆者:磯山友幸 2013年5月21日
エリア: アジア
 財務省の見通しはかなり意図的 (C)時事
財務省の見通しはかなり意図的 (C)時事

 財務省は5月10日、3月末の国の借金残高を発表した。国債と借入金、政府短期証券 の合計額で、総額は991兆6011億円だった。この数字をみて「あれっ?」と思われる方も多いに違いない。

 その通り。この統計は3カ月に1度発表されているが、前回つまり昨年12月末の段階で、財務省は、年度末には1085兆円となり、初めて1000兆円を超える見通しだとしていたのだ。

 

増え続ける国債発行

 実は 財務省は、「1000兆円超え」の見通しを2011年秋ごろから繰り返し出してきた。2011年11月に9月末の残高を発表した段階で、「2011年度末には1024兆円に達する見通し」としたのがおそらく最初。それまで995兆円という見通しを発表してい たが、東日本大震災を受けて11年度の第3次補正予算で11兆5500 億円の復興債の発行を盛り込んだことが、1000兆円突破の理由とされた。やり繰りでは復興財源は賄えないという理由で復興債を発行する以上、それまでの見通しである995兆円に復興債の分を上乗せしなければ辻褄が合わない。

カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
磯山友幸(いそやまともゆき) 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト活動とともに、千葉商科大学教授も務める。著書に『2022年、「働き方」はこうなる』 (PHPビジネス新書)、『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、『破天荒弁護士クボリ伝』(日経BP社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)、『「理」と「情」の狭間――大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP社)などがある。
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