指導者の名前を間違えるとクビが飛ぶ中国メディア

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2013年6月29日
カテゴリ: 国際 政治 文化・歴史
エリア: 中国・台湾

 中国のメディアで働く人間にとって最も恐い失敗は指導者の名前を間違えることである。

  我々が日本の新聞で安倍晋三を安部晋三と書いたり、菅直人を管直人と書いたりしても、「不注意でした」として訂正を出すぐらいでせいぜい口頭注意や始末書で済む。しかし、中国ではそうはいかない。「政治的な過ち」と認定され、当事者の首が飛ぶ事態になるからだ。

 そのことは中国のメディア人はすべて骨身に染みるほど理解しているはずだが、やってはならないミスでも、それをやってしまうのが人間である。

 報道によれば、中国の海西晨報が6月26日の朝刊で「習近平」を「習進平」と書き間違えてしまった。新聞はすべて回収処分となり、担当の編集者2人が停職処分を受けたという。

 胡錦濤のような難しい字ならば間違えることはほぼないが、習近平は書きやすい名前ゆえに同音異義語が多く、変換ミスで誤字が生まれやすい。特に「近」と「進」は「jin4」という、発音も声調もまったく同じ字で、名前として「近平」も「進平」もメジャーであるので、もともと大きな落とし穴と見られてきたが、海西晨報はあっさりと穴に落ちてしまった形だ。

  過去にも指導者がらみの「誤字」問題では、例えば1990年代に江西省の「九江日報」という新聞が国家主席だった江沢民の沢を「怪」と書いて処分を受けた。1999年12月には「安徽日報」が「国家主席」から国を抜いて「家主席」としてしまい、20万部の新聞は回収・廃棄され、編集長や担当編集はすべて左遷された、とされている。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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