日米間の齟齬を「言葉のあや」でごまかすな

春名幹男
執筆者:春名幹男 2013年12月2日
エリア: 中国・台湾 北米

「米政府が、民間航空会社にフライトプランを提出するよう要請したことはないと外交ルートを通じて確認している」

 安倍晋三首相は1日、視察先の岩手県釜石市で記者団にそう説明した。

 中国による「防空識別圏(ADIZ)」の設定、必ず関係国間の情報戦ないしは心理戦の様相を呈するとみていたので、実際に米政府が何と指示したのか、検証してみた。

「ノータム」に沿った運航を「期待」した米政府

 米国務省のホームページに、11月29日付で「中国が宣言したADIZ。米航空会社のためのガイダンス」というタイトルで国務省スポークスマンへの質問に対する回答という形で次のような文章が掲載されていた。

 

*質問: 中国が最近宣言したADIZを運航する米航空会社に対して特別に何かガイダンスを出しているのか?

*回答: 海洋および空域の上空通過の自由および国際法に沿った利用は太平洋における繁栄と安定、安全保障にとって不可欠である。われわれはなお、中国が「東シナ海航空識別圏」を宣言したことを深く憂慮している。

 

 米国政府は一般的に、国際的に運航している米航空会社が諸外国が発行するNOTAMs(Notices to Airmen、いわゆるノータム、航空情報)に沿って運航するよう期待している。ノータムに沿った米航空会社の運航をわれわれが期待していることは、新たに宣言されたADIZへの運航に対する中国の要求を米国政府が受け入れたことを示すものではない。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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