「クリミア」が新たに加わる「ロシアの飛び地」それぞれの事情

国末憲人
執筆者:国末憲人 2014年3月25日

 日本人にとって何の変哲もない山が、ウクライナ人にとっては大きな関心事だ。山があるだけで感動し、写真を撮りまくる。それほどウクライナで、山は珍しい。どこまで行っても平らなのが、この国である。

 ウクライナ国内で数少ない山岳地帯は、西部のカルパチア山脈と、南部のクリミア半島だ。だから、小金を持つウクライナ人は冬にカルパチアでスキーを、夏にクリミアで日光浴を楽しみながら、山を満喫する。

 その習慣が、この夏から間違いなく変わるだろう。ほとんどのウクライナ人はもはや、クリミア半島に足を踏み入れない。いくら太陽と海と山があろうと、この地は屈辱の記憶とともに胸に刻まれたからだ。

 これは、クリミア半島にとっても重大な問題だ。観光収入に頼る半島で、旅行者の約65%はウクライナ本土から来ていたからだ。クリミア半島というとロシア人のリゾート地のイメージがあるが、実際には何より、ウクライナ人のバカンス先だ。

 65%がごっそり消えて、果たしてやっていけるのか。今後、ロシアはそれなりにてこ入れするだろうが、今回の一連の騒動による負のイメージを埋め合わせるのは容易でない。クリミア半島はもともと、第1級の高級リゾート地とは言い難い。ウクライナ人やロシア人でも、金のある人はトルコやエジプトに出かけていたが、その傾向が強まるだろう。

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執筆者プロフィール
国末憲人
国末憲人 1963年生れ。85年大阪大学卒。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。富山、徳島、大阪、広島勤務を経て2001-04年パリ支局員。外報部次長の後、07-10年パリ支局長を務め、GLOBE副編集長、本紙論説委員のあと、現在はGLOBE編集長。著書に『自爆テロリストの正体』(新潮新書)、『サルコジ―マーケティングで政治を変えた大統領―』(新潮選書)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』(いずれも草思社)、『ポピュリズム化する世界』(ダイヤモンド社)、共著書に『テロリストの軌跡―モハメド・アタを追う―』(草思社)などがある。
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