「古地図」で習主席に「ギャフン」と言わせたメルケル

春名幹男
執筆者:春名幹男 2014年5月13日

「地球儀を俯瞰する外交」のため欧州6カ国を歴訪した安倍晋三首相が先週帰国した。

 せっかくの訪欧、特に3月下旬、訪独した習近平中国国家主席に対して、メルケル・ドイツ首相が見事な対中外交を展開したばかりのことであり、安倍首相が何か言うかと注目したが、外務省の発表だと、「力による現状変更の試みは許されず、国際秩序や法の支配が尊重されるべき」だといつもの中国批判しかしなかったようだ。

 

チベット、尖閣は領土に含まれず

 強圧的な態度で周辺諸国を威圧する中国を叱責するには、実は、こんな秘策もある、とばかりメルケル首相は3月28日夜、習主席歓迎晩餐会で外交のお手本を見せてくれた。

 プレゼント交換で、メルケル首相が習主席に手渡したのは骨董地図の複製だった。

 1735年、フランスの地図学者、ジャンバプティスト・ブルギニョン・ダンビルが作製した中国の地図。原図ではなく、ドイツの出版社の複製だが、イエズス会の宣教師らが現地で行った調査を基に作図したもの。米外交誌『フォーリン・ポリシー』のブログによると、原図に残されていたラテン語の説明では、中国本土の全体図を示している。

 しかしこの地図では、チベットや新彊、満州、尖閣諸島などは中国領土に含まれていなかった。同年に即位した清の第6代皇帝、高宗・乾隆帝の61年間にわたる治世で、勢力を大きく拡大し、朝鮮、ビルマ、シャムなどまでを朝貢国とした。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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