「クリミア併合」の裏側:「中国」「ウクライナ」の接近を恐れたロシア

名越健郎
執筆者:名越健郎 2014年5月27日
カテゴリ: 国際

 5月20日上海で行われた中露首脳会談は、翌日天然ガスの大型供給契約に合意するなど成果があったが、プーチン大統領と習近平国家主席は終始険しい表情だった。中露首脳会談は常に、「両国関係は史上最良」と称え合うのに、首脳同士はいつも緊張に満ちた表情が目立つ。今回、習主席はその直後、ナザルバエフ・カザフスタン大統領との会談で終始笑みを絶やさなかっただけに余計違和感があった。背後には、習主席が提唱した「新シルクロード計画」が、ロシアのクリミア併合で潰されたことへの不満があったかもしれない。

 

新シルクロードの起点

 習主席は昨年9月、カザフスタンのナザルバエフ大学で演説し、「人口30億人のシルクロード経済ベルトの市場規模と潜在力は他に例がない」と述べ、太平洋からバルト海に至る陸路の物流大動脈の整備を訴えた。習主席は今春の欧州歴訪でも「新シルクロード計画」を売り込み、中央アジアから南コーカサスを経て欧州に向かう輸送回廊を築くよう訴えた。陸路の物流整備は、中国製品の欧州市場進出を狙っている。

 中国が新シルクロード構想のハブと考えたのが、ウクライナのクリミアだった。中国はウクライナ企業と組んで、総額100億ドルを投じてクリミア大改造を計画していた。うち30億ドルを投じて、セバストポリ北方にあるサキ付近に深さ25メートルの大型港を建設。同港をハブとして鉄道網を整備し、西欧や北欧を結ぶ方針だった。他の70億ドルで石油精製施設や空港、液化天然ガス(LNG)工場も計画。ロシア海軍黒海艦隊本拠地のセバストポリ港の「漁港再建」も含まれていた。

執筆者プロフィール
名越健郎
名越健郎 1953年岡山県生れ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長を歴任。2011年、同社退社。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学東アジア調査研究センター特任教授。著書に『クレムリン秘密文書は語る―闇の日ソ関係史』(中公新書)、『独裁者たちへ!!―ひと口レジスタンス459』(講談社)、『ジョークで読む国際政治』(新潮新書)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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