米共和党下院ナンバー2「予備選敗北」の衝撃

執筆者:足立正彦 2014年6月16日
エリア: 北米

 米国政界に大きな衝撃が走った。6月10日に行われたヴァージニア州第7区選出の連邦下院議員選挙の共和党予備選で、現職のエリック・カンター共和党下院院内総務が大学で経済学を教える全く無名のティーパーティー(茶会党)系候補であるデイヴィッド・ブラット氏に足元を掬われ、まさかの敗北を喫した。米国の主要メディアや米国政治の専門家らも事前に予想すらしていなかった事態が発生したのである。

 共和党は2010年中間選挙で勝利し、翌11年1月に招集された第112議会では下院で4年ぶりに多数党の立場に復帰した。カンター氏が約3年半務めてきた共和党下院院内総務というポストは、ジョン・ベイナー下院議長(オハイオ州第8区選出)に次ぐ下院共和党指導部ナンバー2のポストである。そうした要職にあり、しかも、近い将来、ベイナー下院議長の後継として下院議長に就任するのではないかと見られていた共和党有力者の1人であるカンター氏が、予備選で敗北を喫したのである。2012年の共和党副大統領候補であり、下院共和党の予算・財政政策の立案に極めて重要な役割を果たしてきたポール・ライアン下院予算委員長(ウィスコンシン州第1区選出)や、ケヴィン・マッカーシー共和党下院院内幹事(カリフォルニア州第23区選出)とともに、カンター氏は下院共和党の若手議員の中の「期待の星」と見られてきた。そのため、カンター氏の予備選敗北には共和党関係者からだけではなく、民主党関係者の間からも驚きの声が広がっており、米国政界関係者が受けた衝撃の大きさは計り知れない。

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執筆者プロフィール
足立正彦(あだちまさひこ) 住友商事グローバルリサーチ株式会社シニアアナリスト。1965年生まれ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より、住友商事グローバルリサーチにて、シニアアナリストとして米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当し、17年10月から米州住友商事ワシントン事務所に勤務、20年4月に帰国して現職。
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