中国が台湾の「スパイ工作」公表に踏み切った理由

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2014年10月30日
エリア: 中国・台湾

 スパイ工作を含めたインテリジェンスの世界では、お互い、相手が何をやっているかだいたい分かっていても、漏れている情報の深刻度などを勘案しながら、あえて手を出さないで泳がせておくことがほとんどである。静かに監視を続けながら、タイミングが来たら一気にそのカードを切る。

 中国政府はこのほど、メディアへのリークという形で、台湾に留学する中国人学生に対して台湾の情報機関がさまざまな「工作」を行っていたことを公表した。背後には、今年8月、台湾側の大陸窓口機関「大陸事務委員会」のナンバー2だった張顕耀・前副主任委員が、中台協議に関する台湾側の内部情報を中国側に渡していたとして国家機密法違反の疑いで調査を受けたことに対する報復という理由があったと見られる。張氏の情報提供相手は中国側の高官とされ、摘発という行為自体が中国側に衝撃を与えたことは想像に難くない。

 

暴露された「陸生」スパイ活動

 人民日報系の日刊紙『環球時報』は10月27日、「台湾スパイが大陸学生に裏切りを奨励」と題した記事を掲載した。記事は、2009年から2013年までの間に、台湾大学や宜蘭大学、銘伝大学など20カ所の高等教育機関で、中国人留学生に対して、金銭の報酬を与えることなどによって、中国の政治、経済、軍事関係の政策や機密情報を聞き出した、としている。台湾の情報機関の人員3名の実名や写真まで紙面にさらされ、すでに中国の15都市で40件の事案が摘発 されているという。

執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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