日中首脳会談と「言葉の魔法」

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2014年11月12日
エリア: 中国・台湾

 外交文書は「言葉の魔法」とも言われるが、今回のAPEC(アジア太平洋経済協力)において、日中首脳会談が行われるたった3日前に発表された「日中合意文書」は、外交における「言葉の魔法」の重要性を改めて我々に伝えるものだ。

 習近平・中国国家主席がむくれた表情で安倍晋三首相の言葉を無視した態度は日本人として嬉しくないことではあるが、2人の握手と会談はあくまでもセレモニーであることは誰もが知っている。今回のAPECにおける日中首脳会談は、4項目の日中合意文書の発表において実質的に終わっていた。

 その主要なポイントを簡単に言えば、尖閣諸島問題において日本はやや譲歩し、靖国神社参拝問題において中国はやや譲歩したということになる。

 ただ、総じて言えば、これは一時休戦の約束、と解釈していい。国際関係において、どんなに頑張っても解決できない難問が存在する。そんなとき、我々がとり得る唯一の対処方法は、辛抱強く、諦めず、無理をせず、ただひたすら見守りながら「待つ」ことである。そうすることで、時間が過ぎていくうちに状況が変わり、思わぬアイデアが浮かんでくることもある。お互い、殴り合うよりも当分は忍んでいたほうがマシ、という理屈である。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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