「軍事援助」か「人道援助」か?:「イスラム国」に付け入られた言葉

春名幹男
執筆者:春名幹男 2015年1月22日
エリア: 中東

 突然、インターネット上の映像に黒ずくめの姿で現れたイスラム過激派組織「イスラム国」のメンバーとみられる男。安倍晋三首相に対して言い放った。

「『イスラム国』と戦うために2億ドルを支払うというばかげた決定をした」

 その2億ドル(約236億円)をわれわれに払わなければ人質の日本人2人を殺害する、というのだ。

 これに対して、安倍首相は、2億ドルは「避難民が命をつなぐための支援だ。必要な医療、食料、このサービスをしっかり提供していく」と反論した。

 政府はその後、首相官邸と外務省のホームページ上に、日本語、英語、アラビア語で「人道支援やインフラ整備などの非軍事分野での支援です」と書いたメッセージを掲載した。

 政府関係者の中には、「『イスラム国』側の勘違いも甚だしい」と言う人もいる、と報道されている。

 日本政府が軍事資金を拠出したかのような批判をする「イスラム国」側、これに対して非軍事の「人道支援」だと反論する日本政府。この対立はいったい、どこから生じたのか?

「イスラム国」側に、湯川遥菜さん(42)は昨年8月、後藤健二さん(47)は同11月以降に拘束され、1月20日に突然、「イスラム国」側が2人を人質にして身代金を要求した。安倍首相が3日前の1月17日に訪問先のエジプトで行った政策演説を待っていたかのような動きだった。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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