「習大大」1人勝ちへ移行する中国

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2015年3月25日
エリア: 中国・台湾

 今年の全国人民代表大会と全国政治協商会議の「両会」は、これといった焦点が見えにくいなか、目立ったのは習近平・国家主席の圧倒的な存在感だった。太子党を背景に持つ習近平氏と、中国共産主義青年団を背景に持つ李克強首相という2頭立ての馬車だった中国指導部が、習氏の1人勝ちに変質したことを印象づける場になった。

 本来、中国内政を扱う「両会」の主役は首相。李克強氏には政府報告や記者会見を含めて発言の場はあったが、報告への拍手も小さく、会見も面白みや迫力がなく、精彩を欠くように映った。何より、「習李体制は終わった」という目で誰もが見ていたのが大きかった。

 

謎のアニメ会社

 両会に先立つ旧正月期間中の2月下旬、中国のネット界で3本のアニメが話題を集めた。『(習氏の)大衆路線は本気なの?』『(習氏は)市民の問題を簡単に解決してくれるの?』『官僚たちは(反腐敗を)怖がっているか?』というタイトルで、いずれも制作者は「朝陽工作室」という会社だったが、その実態はよく分からない。1本につき15分ほどの長さで、簡単なアニメーションで世の中の問題を解説していく。

 注目された理由は、そのアニメのなかで何度も習氏が登場することだ。芸術は政治に奉仕するというプロレタリア芸術を採用している中国では、もちろんその枠から飛び出すような芸術家はたくさんいるが、指導者に関するものとなると、やはりそこは政治的な意図をもって作られるべきだという考えが徹底される。そして指導者のアニメを含めた映像番組を作ることは許可なくしてあり得ず、非常にまれだ。「個人崇拝」との批判を招くからだ。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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