「人手不足」と外国人 (9)

人手不足と外国人(9)あるベトナム人留学生の「過労死」

執筆者:出井康博 2015年4月24日
エリア: アジア

 人手不足が深刻化するなか、政府は「外国人技能実習制度」を拡充し、外国人労働者の受け入れを増やそうとしている。ただし、実習生を受け入れられる職種は70程度で、人手不足に直面しながら実習生に頼れない仕事は数多い。
 そうした職種で、「外国人留学生」が労働力として急増している。留学生をアルバイトとして雇うことは、風俗店などごく一部の職種を除けば可能だ。しかも実習生とは違い、採用数の上限もない。一方、出稼ぎ目的で来日する“偽装留学生”も急速に増えている。安倍政権が進める「留学生30万人計画」によって、留学ビザの発給基準が緩んでいるからだ。
 新聞などでは実習生の“奴隷労働”を批判する記事が目立つが、留学生の置かれた状況は実習生よりもずっとひどい。仕事は実習生もやらない夜勤の単純労働が中心で、時給も最低賃金レベルに過ぎない。日本人が嫌がる仕事の担い手として、都合よく利用されているのだ。その姿こそ“奴隷労働”と呼ぶにふさわしい。そんななか、今年2月、1人のベトナム人留学生に悲劇が起きた――。

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執筆者プロフィール
出井康博(いでいやすひろ) 1965年、岡山県生れ。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙『日経ウィークリー』記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)を経てフリーに。著書に、本サイト連載を大幅加筆した『ルポ ニッポン絶望工場」(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『松下政経塾とは何か』(新潮新書)など。最新刊は『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)
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