TPP妥結の大前提「TPA法案」が大詰め

足立正彦
執筆者:足立正彦 2015年4月28日
エリア: 北米

 安倍晋三総理は4月26日から訪米しているが、その直前、安倍訪米を控えた米議会では1つの法案審議を巡る動きが慌ただしさを増していた。上院財政委員会のオリン・ハッチ委員長(共和党、ユタ州選出)、同委員会の少数党筆頭理事であるロン・ワイデン上院議員(民主党、オレゴン州選出)、下院歳入委員会のポール・ライアン委員長(共和党、ウィスコンシン州第1区選出)ら米議会の超党派有力議員が、オバマ大統領に対して通商交渉権限を委任する「大統領貿易促進権限(TPA)法案」を4月16日に上下両院にそれぞれ提出したのである。
 オバマ政権は年内に環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を妥結することを目指しており、その鍵を握るのがTPA法案である。TPAは早期一括採決方式、通称、ファストトラック権限としても知られており、米議会は事前通告などの条件を課す代わりに、大統領が外国政府と締結した通商合意については個々の合意内容の修正を求めず、迅速な審議により一括して承認するか否かだけ決める。合衆国憲法の規定では、大統領に対しては上院の「助言」と「同意」に基づいて条約を締結する権限が付与されている。その一方で米議会に対しては、立法権限として外国政府との通商を規制する権限も認めている。そこで導入されたのがファストトラック権限だ。もしTPA法案を米議会が承認していなければ、米国政府が外国政府と通商合意を締結しても米議会に合意内容が覆される可能性がある。だからこそ、TPA法案が成立していることがTPP交渉妥結の大前提となるのである。

執筆者プロフィール
足立正彦
足立正彦 住友商事グローバルリサーチ シニアアナリスト。1965年生れ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より現職。米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当する。
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