テロリストの誕生(5)「監視下」でも深まる交流

国末憲人
執筆者:国末憲人 2015年5月9日
エリア: ヨーロッパ

 週刊紙『シャルリー・エブド』襲撃事件の容疑者クアシ兄弟が幼少の頃を過ごしたフランス中部コレーズ県と同じように、その東隣に位置するカンタル県もまた、山ばかりで取り柄に欠ける県である。多くのフランス人にとって、この県を記憶するのは、同名のチーズを通じてに過ぎない。セミハードチーズ「カンタル」は、カマンベールやコンテほどの知名度はないものの、フランス人の生活に深く染みついたおなじみの銘柄だ。

 その県都オーリヤックから東に50キロほど、人口2000人程度の山あいの街がミュラである。

 ミュラは、フランスの中央山塊の死火山帯の中央に位置する素晴らしい景勝地である。明るく開けた斜面に中世の街並みが広がっており、その景観はミシュランの旅行ガイドで2つ星に格付けされている。街中には、歴史的建造物に指定された建築物も少なくない。交通の便が良いとは言い難く、有名観光地として開発されているわけではないが、この地に惹かれてパリから訪れる人も少なくない。

 街並みが途切れるところに鉄道駅がある。その真ん前に、いかにも「駅前旅館」といった風情の5階建てホテル「メッサージュリー」が建つ。

 テロ組織「アルカイダ」のフランスでのネットワークの中心にいたジャメル・ベガルの隔離先が、このホテルだった。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
国末憲人
国末憲人 1963年生れ。85年大阪大学卒。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。富山、徳島、大阪、広島勤務を経て2001-04年パリ支局員。外報部次長の後、07-10年パリ支局長を務め、GLOBE副編集長、本紙論説委員のあと、現在はGLOBE編集長。著書に『自爆テロリストの正体』(新潮新書)、『サルコジ―マーケティングで政治を変えた大統領―』(新潮選書)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』(いずれも草思社)、『ポピュリズム化する世界』(ダイヤモンド社)、共著書に『テロリストの軌跡―モハメド・アタを追う―』(草思社)などがある。
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順