「世界遺産」めぐり激化する中韓との「歴史戦」

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2015年5月27日
エリア: 中国・台湾 日本

「世界遺産」をめぐり、中国・韓国から日本の「歴史認識」が問われる事態が相次いだ。核兵器不拡散条約(NPT)の再検討会議の最終文書のなかで、広島と長崎の被爆地への訪問を呼びかける文言を入れることをめぐり、中国が反対を表明した。一方、日本の急速な近代化を支えた製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業の遺構や施設が、「明治日本の産業革命遺産」として、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界文化遺産に登録される見通しになったことについて、韓国と中国が不満を示している。

 一見、異なる問題のように見えるが、広島の原爆ドームもまた世界文化遺産に指定されており、いずれも日本の「歴史修正主義」に対する中韓の警戒心が、「世界遺産」という本来は価値中立的なイシューをめぐって飛び火した形だと言えるだろう。

 世界遺産という注目されるテーマを借りて日本の「歴史修正主義」に抑制を求めようという中韓の意図が込められていると見るべきで、歴史をめぐる情報戦を仕掛けられていることは間違いない。戦後70年という節目の年を迎えるなかで、歴史認識をめぐって日本対中韓の攻防が激しさを増す序曲となる可能性があるという点からも注目すべきだ。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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