南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)をめぐる情勢の緊迫度が高まっている。中国が滑走路の建設などのために大規模な埋め立てを続けていることに米国が猛反発。中国と東南アジア各国との間のローカル・イシューだった南沙諸島問題が、一気にグローバル・イシューに性質が変わってしまった。

 南沙諸島を含めた南シナ海にある島嶼の領有権問題は、一般にメディアで書かれるように「1970年代に海底資源が見つかって以来、対立が深まった」という時間軸と図式で考えようとすると、その理解は局限的になってしまう。米中や東南アジア諸国が戦わせている「言語」を深く読み解くためには「中国近代と南シナ海」の経緯を知っておく意味は小さくない。

 

戦後に占領したのは中華民国

 本質的な疑問として、海南島から大きく南に下った海域の島々まで中国が「私たちの領土である」と主張することには、誰もが不自然さを感じるはずだ。

 360万平方キロの海域に大小300の島々がある南シナ海には、南沙諸島のほか、西沙諸島、東沙諸島、中沙諸島などがある。そのいずれについても、中国領有の法理論的根拠は、現在の中華人民共和国ではなく、いま台湾にある「中華民国」によって整えられた。南沙諸島最大の島である太平島は、いまも台湾が「高雄市旗津区中興里」という地名のもと実効支配している。東沙諸島を同じく「高雄市」の行政区域として台湾が実効支配下に置いているのも、そうした経緯と関係している。

執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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