明治人の「中国紀行」に学ぶ(下)漢族の「熱帯への進軍」

 5月3日、アゼルバイジャンの首都バクーで開かれたADB(アジア開発銀行)のセミナーで、麻生太郎財務大臣は日米が最大の出資国であるADBへの出資比率を高め、「品質の高さ」と「信頼性」を強力に打ち出しました。AIIBに対する牽制でしょう。麻生大臣の発言が3月中旬における英国のAIIB参加表明以前であったなら、中国当局に対する牽制として一定の効果はあったと思われます。だが、現段階でのADBに対するテコ入れ策は、戦争において最も避けるべきとされる「兵力の逐次投入」の感を免れません。やはり日本はADBを経由してAIIB、つまりは北京との間でチキン・レースを展開する必要はなく、費用対効果を考えた時、ADBの将来像を再構築しないままに闇雲に日本からの拠出金を積み増すことは避けるべきだといわざるをえません。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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