大胆に「選択と集中」を進めてきた東芝が株価を下げ続けている。市場がつきつけているのは日本の電機メーカーに共通の課題だ。 年明けから日本の株式市場で異変が起こっている。西田厚聡社長のリーダーシップの下、矢継ぎ早の買収攻勢をかけながら事業・資産の売却を進めて「選択と集中」を実践し、電機メーカー経営のお手本的存在になった東芝の株価が、意外なことに低迷。対照的に事業再編成の中途半端さや、残した事業の競争力の低さがたびたび指摘される日立製作所の株価に、逆転を許してしまった。 株価逆転は昨年五月にも起こっている。そのときは一時的な現象で終わったが、今回は違う。昨秋以降、東芝の株価がほぼ一本調子で下落しているのに対し、日立は九月に安値を付けて以来、株価が一時的に下落しても着実に買われ、踏みとどまっている。まるで、半導体の市況次第で業績が大きく振れがちな東芝の株価を財務体質や期間業績の安定度に勝る日立が上回るという一九九〇年代までの「株式市場の常識」が復活しそうな勢いなのだ。

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