南北「43時間会談」の実相(上)22年ぶりの「準戦時状態」

平井久志
執筆者:平井久志 2015年8月27日
エリア: 朝鮮半島

 8月4日の非武装地帯(DMZ)での地雷爆発に端を発した韓国と北朝鮮の軍事的な緊張激化は、板門店での4日間で計43時間にわたるマラソン会談の末に、ようやく妥結した。協議が決裂すれば、南北間の軍事的な衝突は必至の状況だっただけに、ある意味では南北ともに妥協するしかなかった会談ではあった。
 南北高位級会談の合意で、韓国側は8月25日正午から北朝鮮向けの宣伝放送を中断し、北朝鮮は前線地域に発令していた準戦時状態を解除、とりあえずは軍事的な緊張を回避することになった。南北は6項目の合意を「共同報道文」として発表したが、緊張緩和が定着するかどうかは、この合意の実践に掛かっている。
 韓国側は地雷設置などへの明確な謝罪と再発防止の確約を要求したが、合意では北側が地雷爆発で南側の軍人が負傷したことに「遺憾」を表明することで決着した。韓国側としては、国内向けには「北朝鮮の謝罪」(朴槿恵大統領)としたが、明らかに不十分な結果だった。しかし、合意では、今年の秋夕(旧暦8月15日、今年は9月27日)を期して離散家族の再会を実現し、これを持続するという内容を盛り込んだ。韓国側が従来から要求していた南北離散家族の再会推進という合意を盛り込むことで、謝罪部分での韓国側の譲歩をカバーした形だ。
 南北関係にとって一番意味のある合意は合意項目の第1項にある「南北関係を改善するための当局者会談をソウルまたは平壌で早い時期内に開催し、今後、各分野での対話と協力を推進していく」としたことだ。合意内容では当局者会談のレベルや枠組みまでは明記されておらず、順調に南北当局者会談が進むかどうかはまだ断言できないが、まったく対話のパイプが切れていた南北が、軍事衝突も辞せずというチキンゲームを展開し、最後に対立局面を対話局面に転換させたことは大きな成果だろう。
 今回の危機の発生から妥結までの実相を振り返ってみよう。
 

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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