南北「43時間会談」の実相(下)米中はどう動いたか

平井久志
執筆者:平井久志 2015年8月28日
エリア: 朝鮮半島

 聯合ニュースは8月21日、軍関係者の話として、北朝鮮の非武装地帯(DMZ)砲撃後、米韓軍が「米韓共同局地挑発計画」を稼働していることが確認されたと報じた。この「米韓共同局地挑発計画」は米韓両国が2013年に署名した作戦計画で、北朝鮮の局地的挑発に対して米国が韓国と協力し、北朝鮮の局地的挑発を早期に鎮圧するものだ。米韓両国がこうした連合作戦体制を組むのは1976年の板門店ポプラ事件以降初めてという。

南北ともに危機感高まる

 米韓両国は、対北朝鮮情報監視態勢である「ウォッチコン」(Watch Condition)のレベルを「2」へ引き上げ、対北朝鮮情報の監視要員を大幅に増員した。ウォッチコンは、平時は「4」だが、地雷爆発で「3」に引き上げられ、DMZ砲撃でさらに「2」に引き上げられた。
 朴槿恵大統領は21日には地方視察の予定があったがこれを取り消し、同日午後、京畿道龍仁市にある第3野戦軍司令部を、迷彩服を着て訪問した。北朝鮮の挑発時には「現場指揮官の判断でまず対応し、後に報告せよ」と強く指示した。
 さらに、米韓両国は米第7空軍所属のF16戦闘機4機と韓国空軍所属F15K戦闘機4機の計8機が22日午前11時から約2時間、朝鮮半島の韓国側上空で敵地攻撃と敵機撃退の訓練を行った。北朝鮮側がレーダーなどでこの動きを捕捉することを想定したデモンストレーションで、有事の際には米韓戦闘機による攻撃準備ができていることを北朝鮮側に誇示した。
 一方、北朝鮮は21日、平壌の人民文化宮殿で駐在武官やメディア関係者に対して緊急ブリーフィングを行い、金英哲(キム・ヨンチョル)偵察総局長がDMZ砲撃を「途方もない謀略、ねつ造」と否定し「北南関係の緊張局面が生じた責任をわれわれに転嫁し、反共和国ビラ散布のような同族対決を合理化することのできる口実を設けようとするところにその目的がある」と主張した。
 北朝鮮外務省も同日声明を発表し「戦争の瀬戸際に至った情勢は、これ以上逆戻りさせられなくなった」とした上で「わが軍隊と人民は、単なる対応や報復ではなく、わが人民が選択した制度を、生命を賭して守るために全面戦をも辞さない立場にある」と表明した。 
 一方、聯合ニュースが韓国政府消息筋の話として報じたところでは、北朝鮮は元山付近でスカッドミサイル、平安北道でノドンミサイルを発射する動きをみせており、両方とも移動式の発射車両に搭載されていることが米韓両国の監視により分かったという。
 しかし、韓国では一般市民は平穏で、買いだめなどの現象も起きなかった。北朝鮮でも観光客の受け入れは続き、2013年の朝鮮戦争の休戦協定破棄宣言の時にあった外交官への国外退去勧告もなかった。平壌で国際ユースサッカー大会が開催され、ここには選手・監督・コーチなど韓国人83人も含まれていた。韓国に近い開城工業団地での操業も通常通り行われた。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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