「高速鉄道受注失敗」に見る「日本・インドネシア関係」の変容

執筆者:川村晃一 2015年10月22日
エリア: アジア

 インドネシアの高速鉄道計画において、日本が受注競争で中国に負けたことは大きなニュースとなった。日本政府は、首都ジャカルタとジャワ島東部にある第2の都市スラバヤを結ぶ高速鉄道の導入を2008年にインドネシア政府に対して提案して以降、高速鉄道建設計画では常に先頭を走ってきた。同計画が巨額の事業費ゆえに早期の実現が不可能だということが判明すると、日本は2011年からはその先行区間として、ジャカルタと西ジャワ州の州都バンドンを結ぶ高速鉄道の建設を提案した。この計画は、日本が官民一体で協力しているジャカルタ首都圏の地域開発計画――ジャカルタ首都圏投資促進特別地域(MPA)構想――にも盛り込まれ、日本が優勢な形で進められようとしていた。それだけに、中国案を採用するというインドネシア政府の決定が日本政府に与えたショックも大きかったのである。

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執筆者プロフィール
川村晃一(かわむらこういち) 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 海外調査員(インドネシア・ジャカルタ)。1970年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、ジョージ・ワシントン大学大学院国際関係学研究科修了。1996年アジア経済研究所入所。2002年から04年までインドネシア国立ガジャマダ大学アジア太平洋研究センター客員研究員。2024年からインドネシア国家研究イノベーション庁(BRIN)客員研究員。主な著作に、『教養の東南アジア現代史』(ミネルヴァ書房、共編著)、『2019年インドネシアの選挙-深まる社会の分断とジョコウィの再選』(アジア経済研究所、編著)、『新興民主主義大国インドネシア-ユドヨノ政権の10年とジョコウィ大統領の誕生』(アジア経済研究所、編著)などがある。
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