ユネスコ「世界記憶遺産」騒動をめぐる5つのポイント

鈴木一人
執筆者:鈴木一人 2015年11月2日
エリア: 中国・台湾

 中国の申請した「南京大虐殺の記録」をユネスコが「世界記憶遺産」として登録したことに対して、菅義偉官房長官は10月13日の記者会見で、ユネスコへの「分担金や拠出金のあり方を含め、支払いの停止等を含めてあらゆる見直しを検討していきたい」と述べた。自民党の外交部会などの合同会議でもユネスコの「分担金」の支払い停止を含む決議を10月14日に採択した。

 この騒動はメディアでも大きく取り上げられ、ツイッターなどのSNSでも大きな話題となった。海外メディアは批判的に取り上げた。多くの場合、菅官房長官の発言をユネスコに対する「脅迫」と受け止め、日本の過去の対ユネスコ政策を揺るがす外交的なミスだと見ているようだ。筆者も資金をテコにユネスコを動かそうという意図に疑問を持つし、実際、そうした政策がうまく行った試しもないので、お世辞にも上策とは言えない。

 しかし、日本が申請したシベリア抑留の記録に対し、ロシアからの非難を受けたことで、結局ユネスコの「世界記憶遺産」を政治的な目的でもてあそぶことが様々なリスクをはらむものだという見方も広まり、この「南京大虐殺」をめぐる議論は徐々に沈静化しつつある。ここでこの騒動について5つのポイントから考えてみたい。

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執筆者プロフィール
鈴木一人
鈴木一人 すずき・かずと 北海道大学大学院法学研究科教授。1970年生まれ。1995年立命館大学修士課程修了、2000年英国サセックス大学院博士課程修了。筑波大学助教授を経て、2008年より現職。2013年12月から2015年7月まで国連安保理イラン制裁専門家パネルメンバーとして勤務。著書にPolicy Logics and Institutions of European Space Collaboration (Ashgate)、『宇宙開発と国際政治』(岩波書店、2012年サントリー学芸賞)、『EUの規制力』(日本経済評論社、共編)、『技術・環境・エネルギーの連動リスク』(岩波書店、編者)などがある。
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