南シナ海「米中対立」の原点は台湾海峡にあり

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2015年11月6日
エリア: 北米 中国・台湾

 今回の米艦の南シナ海南沙諸島における行動で、米国と中国との間に、海上での軍事行動をめぐる明確な認識の違いが浮かび上がった。航行の自由を掲げる米国に対し、中国の主な反論は「領海内に立ち入るには、主権国の許可を得なければならない」というものだ。中国が埋め立てを進める人工島に領海が設定できるかどうか、という国際法上の問題は別にして、もともと「領海を含む自国近海での軍活動の制限」は、1950年代の「台湾解放」をめぐる中台緊張のなかで、台湾防衛に介入する米国を阻止しようと中国が掲げた主張でもあった。

 米国の海上覇権をアジアで削り取ろうとする中国。南シナ海での米中確執の背後には、冷戦期から続く半世紀を超えた根深い対立がある。中国の習近平国家主席と、台湾の馬英九総統との歴史的会談が今週土曜日(11月7日)、かなり慌ただしい状況のなか、シンガポールでセットされたが、緊迫する南シナ海情勢に背中を押された中国が、南シナ海の「9段線」を1940年代に定めた中華民国(台湾)を引き寄せておこうという思惑を働かせたと見ることも可能だ。

 米アジア太平洋の安全保障の基本構図として、何らかの有事が発生した場合、米軍が最短時間で駆けつけるという「前提」がアジア太平洋のパワーバランスを支えている。中国が米軍の活動に制限を加えることができるとなれば、「抑止力」という言葉で表現される米国への信頼性が低下し、日本や台湾、東南アジアの安全保障環境が大きく揺さぶられる問題に発展しかねない。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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