国連イラン制裁の現場から(4)制裁逃れの手段

鈴木一人
執筆者:鈴木一人 2016年1月16日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 中東

 年は変わりましたが、本年も連載を続けていきますのでお付き合いいただければ幸いです。今回はイランがいかに制裁逃れの手段を用いたのかを説明します。国連の専門家パネルでは、イランが不法な手段を用いて安保理決議で禁じられた品物を手に入れたこうした手法を見抜き、それを公開して加盟国に注意を促すことが主たる任務でした。こちらが公開すれば、イランは新たな制裁逃れの手段を開発するといういたちごっこでもありましたが……。

ダミー会社を通じた調達

 前回論じたように、国連による制裁はイランが核開発やミサイル開発に必要な物資を入手することを禁じている。そうすることでイランの核開発を遅らせ、核兵器を作ることができないようにするのが目的であった。
 しかし、国内で生産できない精密機器や部品などを輸入に頼らざるを得ないイランは、それでも制裁を逃れて密輸しようと様々な手段を取ってきた。
 制裁を逃れる一般的な方法としてよく知られるのが、制裁を厳しく科している国からいったん第3国に設立したダミー会社に輸出し、イランがそこから物資を調達する方法である。ダミー会社は世界各地にあり、特にイランとの経済関係が強いUAEやトルコといった周辺国に多くあったが、それ以外にも数多く存在しており、ほとんどの制裁逃れの物資調達はダミー会社を通じてなされていた。
 ダミー会社は次々に作られては消えていくため、全てを把握することは非常に難しい。しかし、様々な情報を収集することによって、ダミー会社の主な設立パターンは明らかにされており、また、各国の輸出管理当局も実体のない取引をしている会社に向けた輸出はイラン向けでなくても精査することが求められている。
 このようなダミー会社の関連情報は各国政府の間でも共有されるようになっており、それによってイランへの輸出を止めることができたケースもあった。

執筆者プロフィール
鈴木一人
鈴木一人 すずき・かずと 北海道大学大学院法学研究科教授。1970年生まれ。1995年立命館大学修士課程修了、2000年英国サセックス大学院博士課程修了。筑波大学助教授を経て、2008年より現職。2013年12月から2015年7月まで国連安保理イラン制裁専門家パネルメンバーとして勤務。著書にPolicy Logics and Institutions of European Space Collaboration (Ashgate)、『宇宙開発と国際政治』(岩波書店、2012年サントリー学芸賞)、『EUの規制力』(日本経済評論社、共編)、『技術・環境・エネルギーの連動リスク』(岩波書店、編者)などがある。
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