「値下げ」直後の「再稼働差し止め」判決で苦境に立つ関西電力

執筆者:安西巧 2016年3月16日
エリア: アジア

“好事魔多し”とはまさにこのことだろう。

 昨年12月以降、当初困難とされていた老朽原発の高浜原子力発電所(福井県)1、2号機の安全審査「合格」に始まり、福井地方裁判所における高浜3、4号機の再稼働差し止め訴訟での勝訴と、それに続く両機の再稼働実現など、朗報続きだった関西電力が見事に足元を掬われた。3月9日に大津地方裁判所が下した高浜3、4号機の運転を差し止める仮処分決定は、同社首脳陣が描いていた業績回復のシナリオを根底から覆した。5年前の東京電力福島第1原子力発電所事故(3.11)後も再稼働一本槍で巨額の投資を注ぎ込んできた関電にもはや戻る道はなく、同社関係者自身も認めてきた「原発と心中」がいよいよ現実味を帯びてきている。

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執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
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