ペルー大統領選:「フジモリの娘」に立ちはだかる「反フジモリ感情」の壁

遅野井茂雄
執筆者:遅野井茂雄 2016年3月25日
カテゴリ: 国際 政治 社会
エリア: 中南米

 中南米ではリオデジャネイロ五輪開催を前にしたブラジルの政治的混迷とルセフ政権の命運に注目が集まっているが、ペルーでは4月10日の大統領選挙を前に日系で初の女性大統領の誕生の可能性がにわかに強まっている。だが、それは同時に国内をフジモリ対反フジモリに二分する分極化(対立)を強める結果となり、予断を許さない状況が続いている。

現状「ケイコ・フジモリ」が優位

 フジモリ大統領が失脚した2000年以降のペルー大統領選挙において、決選投票で敗れた大統領は必ず次の大統領選挙で勝利している。2001年のトレド大統領、2006年のガルシア大統領、2011年のウマラ大統領と3代続けて、前大統領選挙での決選投票での敗者がいずれも選出されている。
 その“ルール”に従えば、前回2011年の決選投票で、僅差でウマラ候補に敗れたケイコ・フジモリ候補(40歳)が、次期大統領に最も近い候補者ということになる。実際、直前の世論調査では常に30%以上を保持して首位を独走し続けており、2位の候補者にダブルスコアの差をつけ、他の候補者の追随を許さない優位な選挙戦を戦ってきた。
 だがフジモリ元大統領の長女ケイコ候補の勝利が決して楽観を許さないのが、根強く存在する反フジモリ感情である。むしろ元大統領の長女が大統領に就任するという現実味を帯びるにつれ、決選投票で敗れた候補者が、次の選挙で大統領に選出されるというポストフジモリの政治構図をくつがえすモメンタムを持ち始めたといっても過言ではない。
 14人の候補が乱立する中で、1回目の投票で「人民勢力党」のケイコ候補が過半数を制するという見方はほとんどなく、その点で大きなカギを握るのが1回目の投票で2位に誰がつけるかである。

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執筆者プロフィール
遅野井茂雄
遅野井茂雄 筑波大学大学院教授、人文社会系長。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(編著)。
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