ブリュッセル・テロ:「人権・自由」と「治安強化」に揺れるヨーロッパ

渡邊啓貴
執筆者:渡邊啓貴 2016年3月26日

 EU(欧州連合)・欧州委員会の所在地、いわば「欧州の首都」で22日朝起こった同時テロは、世界に大きな衝撃を与えている。空港での爆発の約1時間後、今度は市内中心部の欧州委員会本部などが置かれる官庁街の地下鉄駅構内で爆弾事件が起こった。この連続テロで、少なくとも34人が犠牲となり、200人以上の負傷者が出た。 事件から2日たったところで、犯人の実像が次第に明らかとなってきた。空港の3人が爆発物を隠したバッグをカートで運ぶ姿が監視カメラに写っていた。自爆で死亡した容疑者の2人はいずれも昨年11月のパリ同時テロに、関与していたとみられている。帽子をかぶり、眼鏡をかけた男の身元は判明しておらず、逃走中である。

「イスラム国」(IS)は事件当日犯行声明を出した。この事件は、昨年11月のパリ同時テロの実行犯の1人とみられ、逃走中だったサラ・アブデスラムが、ブリュッセル郊外のモレンベークで逮捕された4日後に起こった。この逮捕で彼らが次の爆弾テロを考えていたことが判明していたこともあって、その数日後の今回のテロは人々に大きな恐怖感を与えた。安定した先進社会の暗い深淵を、改めて認識させた出来事であった。

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執筆者プロフィール
渡邊啓貴
渡邊啓貴 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。1954年生れ。パリ第一大学大学院博士課程修了、パリ高等研究大学院・リヨン高等師範大学校客員教授、シグール研究センター(ジョージ・ワシントン大学)客員研究員、在仏日本大使館広報文化担当公使(2008-10)を経て現在に至る。著書に『ミッテラン時代のフランス』(芦書房)、『フランス現代史』(中公新書)、『ポスト帝国』(駿河台出版社)、『米欧同盟の協調と対立』『ヨーロッパ国際関係史』(ともに有斐閣)『シャルル・ドゴ-ル』(慶應義塾大学出版会)『フランス文化外交戦略に学ぶ』(大修館書店)『現代フランス 「栄光の時代」の終焉 欧州への活路』(岩波書店)など。
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