一触即発の朝鮮半島(下)カギとなる「中朝関係」

平井久志
執筆者:平井久志 2016年4月1日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障

 中国の王毅外相は全国人民代表大会(全人代)に合わせた3月8日の会見で、朝鮮半島情勢について「『剣抜弩張』(剣を抜き大弓を張った)状態で火薬の臭いが充満している。緊張が激化し、統制力が喪失する状態になれば、各国すべての災難になる」と警告した。王毅外相の警告以後の南北の対応はまるでチキンゲームだ。

「懲罰の発射ボタンを押す」

 米韓両国が3月12日に浦項で北朝鮮海岸部への上陸と内陸部への進撃を想定した「双竜訓練」を公開すると、北朝鮮の人民軍総参謀部は声明を発表し「南朝鮮の浦項一帯で、歴代最大規模で強行される『双竜』訓練が共和国に対する不意の奇襲上陸を伴う『平壌進撃作戦』を通じて朝鮮の最高首脳部と主要中核施設を打撃して『体制転覆』を達成する『作戦計画5015』のクライマックス段階であることをはばかることなく公開している」と双竜訓練を非難した。この上で「敵の『平壌進撃』を狙った反共和国上陸訓練にはソウルをはじめとする南朝鮮全域の解放作戦で、『ピンポイント打撃』戦術には朝鮮式の電撃的な超精密奇襲打撃で対応するであろう」と応酬し、「戦争の挑発に狂奔する侵略者を射程圏内に入れたわが軍隊は、懲罰の発射ボタンを押す時刻だけを待っている」と威嚇した。
 北朝鮮は言葉だけでなく3月11日には金正恩第1書記の視察する中で「戦車兵競技大会2016」が行われたと公表。さらに、韓国側の「双竜訓練」に対応して、金正恩第1書記が視察する中で上陸訓練と上陸阻止訓練を行ったと3月20日付の労働新聞は伝えた。しかし、公開された映像などではさびついた上陸艦や旧式の戦車などが登場し、装備面での米韓への劣勢を逆に露呈した。
 韓国の朴槿恵大統領も3月15日「北朝鮮がこうした無理な挑発と国際社会との対立を続け、変化の道に進まなければ、自滅の道を行くことになる」と述べ、核放棄に応じなければ体制維持もできなくなると警告した。3月21日には青瓦台の首席秘書官会議で金正恩第1書記を呼び捨てにして「無謀な挑発を試みている」と非難した。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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