CIAの陰謀か? 「パナマ文書」をインテリジェンス的に読み解く

春名幹男

 タックスヘイブン(租税回避地)への偽装会社設立を斡旋する中米パナマの法律事務所モサック・フォンセカを震源に、突然世界を駆けめぐった「パナマ文書」のニュース。

 習近平国家主席の親族らがかかわった財産隠しの疑いが報道されると、中国当局は関連情報の拡大を封鎖。プーチン大統領の親友絡みの資金洗浄の疑惑に対しては、ロシアからは「CIAの陰謀」説が飛び出した。

 ともかく流出した情報量が膨大で、世界の著名人の名前が次々と明らかにされるが、米国の政治家や経済人らの名前がこれまでのところまったく出てこないのも奇妙ではある。

 米国の民間組織「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」が南ドイツ新聞を経由して入手した資料は約1150万件、2.6テラバイトに及んだ。2010年に表面化した内部情報公開サイト「ウィキリークス」が入手した米軍のアフガニスタン・イラク戦争関連情報および国務省文書が約75万件で1.7ギガバイト。USBメモリ1本に収めて移動できたのと比較しても、圧倒的に膨大な量だ。

 ウィキリークスの事件も元米中央情報局(CIA)職員エドワード・スノーデン容疑者がデータを持ち出した事件にしても、反米プロテストという動機が明確になっている。しかし、パナマ文書の事件は、一体だれが、何の目的でこれほど大量のデータを流出させたか、いまだに明らかになっていない。ネット上などで陰謀論が流れる理由はそんなところにある。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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