「漁船拿捕」で台湾・馬英九総統が発動した2週間の「チキンレース」

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2016年5月6日

「戦後もっとも良好な日台関係」

 昨今、日本と台湾の双方の関係者が自信を持ってそう語り合っていた日台関係が、突如、大きな衝撃に見舞われた。台湾の屏東県の漁船「東聖吉16号」が日本の排他的経済水域(200カイリ内)である沖ノ鳥島沖で違法に操業していたとして、4月25日に海上保安庁が拿捕したことに対し、台湾側が強硬に反発しているのだ。「報復措置」として沖ノ鳥島200カイリ内に再び漁船を出航させ、台湾の政府機関である海巡署と漁業署からそれぞれ1隻ずつ船を派遣しただけでなく、同じ海域に台湾海軍のフリゲート艦も派遣して待機させるという過激な行動を取っている。台湾の船団は5月6日時点には沖ノ鳥島200カイリ内に到達したとも見られるが、台湾メディアの報道では、日本側も海上保安庁の船が多数、この海域に待機しており、一触即発の状況が出現する可能性もある。

 

芽生えていた「報復心理」

 この事態について、台湾の馬英九政権で対外関係を担当する幹部の1人は、筆者の取材にこう答えた。

「これは馬総統が仕掛けた2週間の期間限定のチキンレースです。もう事務レベルでは処理できない話になってしまった。日本には、申し訳ないが、ひたすらこらえてほしい。台湾側にケガ人が出るとか、船が損傷を受けるとか不測の事態が起きた時は、目も当てられないことになる」

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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