朝鮮労働党大会「設計図なき戴冠式」(1)
祖父を意識した「総括報告」

平井久志
執筆者:平井久志 2016年5月17日
エリア: 朝鮮半島

 朝鮮労働党の第7回党大会が5月6日から9日まで開催された。北朝鮮における党大会とは前回の党大会からその党大会までを総括し、今後の路線やビジョンを示す党の最高意思決定機関である。金正恩(キム・ジョンウン)氏は今年元日の「新年の辞」で「朝鮮労働党第7回大会は、偉大な領袖らの賢明な領導の下にわが党が革命と建設で収めた成果を誇らしく総括し、わが革命の最後の勝利を早めるための輝かしい設計図を広げることになる。われわれは、主体革命偉業遂行で歴史的な分水嶺となる党第7回大会を勝利者の大会、栄光の大会として輝かせるべきである」と強調した。第7回党大会は「勝利者の大会、栄光の大会」だったのか、「輝かしい設計図」が示されたのだろうか?

背広姿で「開会の辞」

 朝鮮労働党第7回党大会は5月6日午前に始まったが、北朝鮮メディアは大会開会をまったく報じなかった。この大会取材のために約120人の海外メディアが平壌入りした。取材陣は大会が開かれた「4.25文化会館」の道路を挟んだ向かい側まで案内されたが、大会会場に入れず、開会の確認もできなかった。海外メディアは、それぞれに付いている監視役を兼務した「案内員」の言葉を借りて「開会したもよう」と報じるのが精一杯だった。
 何の情報もないまま1日目が過ぎようとしたが、6日午後10時(日本時間同10時半)になり、朝鮮中央テレビや朝鮮中央放送(ラジオ)は突然、党大会の開会を報道した。同放送は「偉大な党の領導の下、朝鮮革命は第6回党大会が開かれてからこの数十年の間、想像を超越する最悪の試練の中で、他人であれば何世紀掛かっても成し遂げることのできない最大の勝利を収めた」と報じた。
 また「労働党の偉大な領導は、わが祖国を政治思想強国、軍事強国、青年強国への地位へと引き上げ、核強国、宇宙強国の戦列に堂々と入るようにする歴史の奇跡を創造した」と「党の奇跡」を称えた。
 北朝鮮は「政治思想強国、軍事強国、青年強国」になり、さらに金正恩氏によって「核強国」「宇宙強国」の仲間入りをしたとの解説だった。しかし、ここには「経済強国」という言葉は入らなかった。
 朝鮮中央テレビは、この時点で党政治局常務委員である金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長と黄炳瑞(ファン・ビョンソ)軍総政治局長を従えて大会のひな壇に姿を現した金正恩氏を報じた。金正恩氏は背広にネクタイ姿だった。2012年4月の第4回党代表者会で金正恩氏が党第1書記に推戴された時、党機関紙「労働新聞」は4月12日付3面で背広、ネクタイ姿の金正恩氏の顔写真を大きく報じたことがあるが、背広姿の金正恩氏の動画などが公開されるのは極めて珍しいことだった。これまで、故金日成(キム・イルソン)主席がしばしば背広姿で公式活動をこなしており、金正恩氏の背広姿は今でも人民の尊敬を集めている金日成主席のイメージに似せようとしたものとみられた。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順