難民問題とドイツ(1)躍進した「AfD」

執筆者:佐瀬昌盛 2016年6月8日
エリア: ヨーロッパ
”反難民”で急躍進した「AfD」共同党首の1人、フラウケ・ペトリー女史(C)EPA=時事

 

 ヨーロッパ全体がテロと難民問題で揺れている。とりわけ、東から南から押し寄せる難民の大群は、欧州各国には悩みの種だ。東からの難民は、遠くはバングラデシュから流入するケースもあるらしい。もっとも最大の難民流出国はシリアである。南からはリビア難民が地中海をボロ船にのってイタリアやギリシャに入陸する。いずれもが決死の逃避行であることに違いはない。

「IS(イスラミック・ステート)」によるテロと大量に流入する難民の群れとは長年、経済的に繁栄し、政治的にも――ギリシャあたりをやや例外として――安定してきたヨーロッパ諸国にとっては、文字どおり「太平の眠りをさます蒸気船(上喜撰)、たった四杯で夜も眠れず」といった災難である。ただ、この2つの現象がもつ意味は違っていた。ISメンバーによるテロ行為は、打ち上げ花火のような一過性、瞬時性の現象である。人目を奪うが継続性、連続性に乏しい。瞬間的な話題性に富んではいるが。

 他方、大量流入する難民の群れは派手さはないものの、長期性をその特徴としている。さらにテロリスト集団の活動にはない、地下水が湧き出るようなところがある。両者はともに今日のヨーロッパにとって対処の難しい問題ではあるが、量的規模が大きく違う。ISのテロリストたちは――事柄の性質上、精確ではありえないが――多く見積もって数万を超えないであろう。ところが、今日、難を逃れて西欧諸国に流入する老若男女は、少なくみても200万程度には達すると見られている。

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執筆者プロフィール
佐瀬昌盛 防衛大学校名誉教授。1934年生れ。東京大学大学院修了。成蹊大学助教授、防衛大学校教授、拓殖大学海外事情研究所所長などを歴任。『NATO―21世紀からの世界戦略』(文春新書)、『集団的自衛権―論争のために』(PHP新書)など著書多数。
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