仏ニースのトラック突入テロ:「過激派との関係」は不明確

執筆者:国末憲人 2016年7月17日
犯人が乗っていたトラック。弾痕の痕が生々しい(C)AFP=時事

 

 フランス南部のリゾート都市ニースで14日に起きた大型トラック突入事件は、昨年1月の風刺週刊紙『シャルリー・エブド』襲撃事件、11月のパリ同時多発テロ、今年3月のブリュッセル連続テロに続く欧州での大規模テロとなった。射殺された容疑者はどのような人物か。これまでのテロと何が共通し何が違うのか。まだ不明な点が多いが、現地の報道をもとに探ってみた。

 

1.8キロを蛇行運転

 現地17日未明現在、犠牲者は子ども10人を含む84人に達する。けが人は202人で、うち52人が重体となっている。個人による殺人事件としては、2011年にノルウェーでアンネシュ・ブレイヴィクが起こした連続テロを上回る犠牲者となった。
 仏紙『ルモンド』によると、容疑者のモハメド・ラフエジ=ブフレル(Mohamed Lahouaiej Bouhlel)は、7月11日に隣のヴァール県で19トントラックをレンタルした。13日に返却する契約だったが、その日はニース中心部のオリオル地区に駐車したままだった。
 革命記念日の14日午後9時半過ぎ、彼は駐車場所まで自転車で行き、トラックを出した。午後10時45分ごろ、ニースでも最も華やかなプロムナード・デ・ザングレの入り口に着いた。地中海に面した並木道で、反対側には高級ホテルが並ぶ。世界中の金持ちや観光客が集まる場所である。トラックは最初ゆっくり走り、続いてスピードを上げ、プロムナード・デ・ザングレの147番地から11番地にかけての約1.8キロを蛇行しながら走行し、花火大会の見物に来ていた人々をなぎ倒し続けた。
 難を逃れた男性は地元テレビに「最初はハンドル操作ができなくなったのかと思い、運転手に話しかけようとした。彼の顔が見えたが、ひげをはやしており、むしろ楽しそうな雰囲気さえ持っていた」と語った。
 この間には、セレブの御用達で知られる最高級のホテル・ネグレスコが左手にある。そこにいた警察官に向かって、容疑者はピストルで発砲した。警察官らが応戦したが、トラックはさらに300メートルほど走って止まり、銃撃戦となった。容疑者は射殺された。

カテゴリ: 社会 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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