「五輪で国威発揚」が裏目に出るロシア

執筆者:名越健郎 2016年7月28日
エリア: ヨーロッパ

 ロシアの国家ぐるみのドーピング違反問題で、国際オリンピック委員会(IOC)は8月5日に迫るリオデジャネイロ五輪からロシアを全面除外する処分を避け、参加の是非は各競技ごとの国際連盟に委ねることを決めた。世界反ドーピング機関(WADA)や米独など各国の反ドーピング機関はIOCの決定を非難したが、IOCはロシアを全面排除して欧米との冷戦が激化する責任を負うことを回避したかったようだ。IOCのバッハ会長とプーチン大統領の個人的親交も影響した可能性があり、ロシアとしてはまずまずのシナリオとなった。

ドーピングはスパイと同じ?

 ロシアのメディアはドーピング問題では愛国主義一色で、「ロシアを五輪から締め出そうとする米国の陰謀」といった反発ばかりだ。国家ぐるみの組織的違反行為を米紙に暴露し、米国に滞在中のロドチェンコフ元ドーピング検査所長は「裏切り者」「嘘つき」「脱落者」と糾弾されている。

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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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